【なぜ波なのか?】サードウェーブを遡って説明する!【コーヒーのファーストウェーブ、セカンドウェーブって何よ?】

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今回は、コーヒーのサードウェーブについて書いていきたいと思います。

サードウェーブっていう用語は、日本ではかなり曖昧に使われている気がします。

そして、なぜ、「ウェーブ」波なのか。

「乗るしかない、このビッグウェーブに!」という意味合いなのか、と言えば、それだけではない。そういうところを、サードウェーブ以前の、セカンドウェーブ、ファーストウェーブとの比較しながら、語っていきたいと思います。

何故波なのか?

コーヒーのサードウェーブ。

これは実は、フェミニズムに例えた呼び方です。

レッキンボールという、全米のコーヒーギークたちに熱狂的な支持を受けているカフェ・ロースターのオーナー、トリシュ・ロスギブ氏が、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)のニュースレターを執筆したときに名づけたのが、サードウェーブコーヒーの由来です。

ロスギブ氏は、世界で進行している新しいコーヒー文化を、アメリカの女性解放運動になぞらえて、サードウェーブと呼ぶことにしました。

フェミニズムのファーストウェーブは、権利主張、セカンドウェーブは、社会的平等、サードウェーブは社会進出。

これになぞらえて、ロスギブ氏は、ファーストウェーブはコーヒーの民主化、セカンドウェーブは、本格的な社会進出、サードウェーブは、コーヒーの本当の意味での自由と解放と位置づけました。

これが、サードウェーブという呼び方の始まりでした。

ファーストウェーブとは何だったのか

コーヒーのファーストウェーブ。ロスギブ氏がいうところの「コーヒーの民主化」とは何だったのか。

これは、つまり、コーヒーの大量消費、と言い換えることができます。

たとえば、ネスレに代表されるインスタントコーヒー。

MJBなどの挽いた状態で販売される大量のレギュラーコーヒー。

これらの大量生産を可能とした、コーヒーの工業的な生産。大量生産を前提とした、コーヒーの大量消費文化。

これらがファーストウェーブです。

しかし、この大量生産を前提としたコーヒーのファーストウェーブは、必然的なコーヒーの質的低下を招きました。

たとえば、レギュラーコーヒーへの大量の混ぜ物による、量のかさましです。

昔のことです。日本のコーヒー業者たちが、アメリカゼネラルフーズへ視察にいったときのことです。コーヒーの中に大量に茶色い粉末が投入されているのを目にしたそうです。

驚いた業者の方は、案内の方に「あの茶色い粉末は何なのか」と尋ねたそうです。案内の方は、悪びれることなく「量を増やすための煎った小麦粉だ」と答え、業者の方を驚かせたそうです。

飲まれるコーヒーは、色のついたお湯同然の、薄いアメリカンコーヒー。コーヒーの味を楽しむ、ではなく、カフェインの摂取のため、働くための燃料同然。

そうでなければ、一日何十杯と飲むことはできません。

日本においても、この大量消費の文化は行われます。

喫茶店がコーヒー豆を大手のロースターから仕入れると、浅煎りの粗悪なコーヒーが届いたそうです。何故浅煎りなのか。それは、コーヒー豆は基本的に重量で取引されます。深煎りにすると、成分が揮発するので、容積あたりの質量は小さくなります。つまり、ある一定量の生豆からできる量、販売できるコーヒー豆の量が減ることになります。そのため、利益追求のために、みな浅煎りで販売されたそうです。また、欠陥豆があってもそれを取り除くことは、販売できる数量の減少を招くため、欠点豆のせいで味の劣化が起こったとしても委細かまわずでした。

そのため、そのアンチテーゼとして、日本の自家焙煎店では深煎りとハンドピックの文化が根付きました。

また、さらに、そういう浅煎りのコーヒー豆を仕入れた喫茶店では、喫茶店そのものの利益追求のため、淹れたコーヒーにさらにお湯を投下して薄くしたアメリカンコーヒーが提供されることになります。

とにかく、大量生産・大量消費を追及して、質の向上には一切目を向けなかったのが、ファーストウェーブの特徴でした。

セカンドウェーブはイノベーションだった

セカンドウェーブの代表例は、スターバックスです。

スターバックスは、日本中どこにでもある、ある意味一番身近なコーヒーチェーンなので、スターバックスを利用したことがあるかと思います。

そんなスターバックスが、掲げたのが「サードプレイス」という概念でした。

職場でも家でもない、落ち着いてコーヒーを楽しむことができる第3の場所が、忙しい現代人には求められている、それがスターバックスの戦略でした。

そして、サードプレイス(第3の場所)を印象付けるのが、ファーストウェーブにはない、高品質で、今までにない深煎りのコーヒー豆によって作られる、各種のエスプレッソドリンクでした。

今では、スターバックスでも軽食が提供されていますが、当初のスターバックスは軽食の提供は、積極的ではありませんでした。なぜなら、軽食を提供すると、忙しいビジネスマンなどが、手早く食事をとるための手段として来店するのではないか、と考えられたからです。これは、「ゆったりとリラックスできる」サードプレイスを提供する、というスターバックスの考えとはかけ離れていました。

スターバックスにはカウンターが設けられて、オーダーしてからバリスタがコーヒーを作る工程を眺めることができました。

これもまた、スターバックスのこだわりでした。

ゆっくりとコーヒーを作ることによって、忙しいお客さんを、大量消費と前提としたファストフードの概念から距離を置いたのです。

これはつまり、大量消費大量生産を前提としたファーストウェーブの考え方とは、まったく逆の、新しい考え方でした。

スターバックス以降、コーヒーの品質を追及する、という考え方は珍しいものではなくなりました。

スペシャルティーコーヒーという概念も生まれ、コーヒーの品質追求が進化していくことになります。

まさに、スターバックスはイノベーションを起こしたのです。

サードウェーブという、セカンドウェーブオルタナティブ

セカンドウェーブが、ファーストウェーブとはまったく逆の、新しい考え方だった。

これに対して、サードウェーブは、セカンドウェーブの延長線上にあります。

ではなぜ、サードウェーブは興ったのか。

セカンドウェーブの代表格、スターバックスは拡大を続け、全世界に出店するようになりました。

そうなると、世界中で均質な味、クォリティを提供することが求められます。

ファーストウェーブを克服した、対立しているはずのスターバックスは、いつの間にかファーストウェーブ的な価値観に飲み込まれることになります。

それによって、スターバックスへは批判が生まれます。

フェアトレードなどに代表される、サステイナブル・コーヒー(持続的なコーヒー)に消極的過ぎるのではないか、という批判が生まれます。

大量生産・大量消費を前提とする、ファーストウェーブセカンドウェーブは、コーヒーの生産地を搾取しているのではないか、それによって、コーヒーの生育環境や、生産環境が荒廃しているのではないか。

スターバックスが高品質なコーヒーを掲げる以上、コーヒーの生産地への責任を果たすべきだ、という意見がでてきます。

これが、サードウェーブ誕生の発端です。

実際問題、大量生産によってコーヒー価格の暴落などが起こった結果、コーヒー農園が廃業し、あまつさえコーヒーからコカインへと転換したり、コーヒーの生産者の生活が貧しくなり、子供たちが学校へいくこともできない、貧しいまま固定されてしまう。環境保護に力を注げず、農園やその周りが荒廃してしまう、という事態が起こっています。

ならば、フェアトレードを、生産者にフォーカスしたコーヒーを作る、という動きが出てくることになります。

大量生産を前提としないのならば、生産量の安定しない小規模農園の生産するコーヒー豆を提供できる。生産者の顔が見えるコーヒー、トレーサビリティのあるコーヒーを提供する。生産地が持続可能な関係を作る。

それは、スターバックスの、コーヒーへの品質追及や、落ち着いた空間作りなどはそのままに、サステイナブルコーヒーの要素を付け加えられた、言ってみれば、セカンドウェーブ・オルタナティブでした。オルタナティブ、というのは代替品、という意味ですが、「より害の少ない」という意味もあるそうです。

その中で、ファーストウェーブのアンチテーゼであり、独特な文化を細々と気づきあげてきた、日本の自家焙煎コーヒー店、コーヒー専門店の文化が流入融合し、サードウェーブのスタイルが確立することになります。

ファーストウェーブ・セカンドウェーブ・サードウェーブを対照表にしてみた

表にすると、こうなります。

サードウェーブまでの道のり比較表
ファーストウェーブ セカンドウェーブ サードウェーブ
キーワード コーヒーの大衆化 第三の場所(サードプレイス) 持続可能(サステイナブル)

オルタナティブ・セカンドウェーブ

特徴 コーヒーの大量生産・大量消費。質は二の次、三の次

コーヒーが一般化する。

高品質なコーヒーを通じてリラックスできる空間を作る。

エスプレッソに温めたミルクを入れた、シアトル流カフェラテを作った。

スペシャルティコーヒーの誕生

単一農園の豆(シングルオリジン)のスペシャルティコーヒーを推進。

日本の喫茶店スタイルの影響

農園などコーヒーの生産者と消費者をつなぐ役割を果たし、持続可能なコーヒーを作る。

規模 工場での大規模生産 工場での焙煎、世界中の店舗 地域密着型の小規模店舗
焙煎 (販売できる量が増えるので)浅煎り (ファーストウェーブのアンチテーゼとしての)深煎り (豆の持つ酸味を生かすための)浅煎り
品質 量を優先。味なんてどうせわからない

コーヒー豆の品質なんてどうでもいい、とにかく安く手に入ればいい。

世界中どこでも均一の高い品質を追求。

世界中で均質なコーヒーを作らなくてはいけないため、小規模農園の豆は使えない。

フェアトレードは、コストの増大が大きすぎるので消極的

小規模だからこそできる、コーヒー豆それぞれの個性を生かすための焙煎

コーヒー豆の追跡性(トレーサビリティ)を重視

小規模な農園の豆なども使用する。

フェアトレードに力を注ぐ。

方針 グローバリズム グローバリズム ローカリズム
代表例 ネスレやMJB スターバックス ブルーボトルコーヒー
代表的なメニュー お湯で薄めて作る、色のついたお湯も同然のアメリカンコーヒー スターバックスのカフェ・ラテ ペーパードリップやエアロプレスで淹れるシングルオリジンコーヒー