以前、「究極のコーヒーメーカー」として、HARIOのSmart7というコーヒーメーカーを紹介しました。
究極のコーヒーメーカー?ハリオスマート7がすごい!
湯音や湯量、抽出時間などを細かく設定できる、ドリップの味の世界を探求するのに役立つコーヒーメーカーでした。
そして、今回、そのSmart7のライバルになりえるかも知れない、抽出の各要素を細かく調整できる、味作り向けの性能として究極とも言える機種が出ました。
それが、この記事で紹介する、タイガーの蒸気プレス式コーヒーメーカー、グランエックスACQ-X020です。
すごさを語ってみる
さて、ではまず、どう「究極のコーヒーメーカー」たりうるのか、を語ってみたいと思います。
Smart7を引き合いに出すからには、抽出の各要素を細かく設定できるのですが、今回のグランエックスでは、見覚えのない要素がありますので、まずそれから話していきたいと思います。
蒸気プレス式……?
グランエックスの抽出方法は、タイガー独自のシステム「Tiger Press」こと、蒸気プレス方式が採用されています。
これは、シリンダーの中で、コーヒー粉をお湯に浸します。そして、浸すことでコーヒーの成分がお湯に抽出されたところで、蒸気でカップへ押し出すという……。
要するに、ほぼほぼエアロプレスですね。
フィルターは、チタンメタルメッシュフィルター。
なので、カップの底には微粉が残ります。
これが、個人的にはちょっとマイナス。(プレスのカップの底に粉が残るのがそんなに好きではない)
カスタマイズ性
というわけで、Smart7のライバルたりえる要因である、抽出条件のカスタマイズ性について書いていきます。
抽出量は、240ml(カップ2杯)~60ml(アイス用)までの間で可変です。
可変と言っても、4種類。240ml(カップ2杯)180ml(カップ1.5杯、マグカップ用?)、120ml(カップ1杯)60ml(アイスコーヒー用)でしか調整できません。
ここに関しては、Smart7が、270ml~700mlまでの間で、10ml単位で抽出量を変更できることに対して劣る部分です。
湯温は95℃90℃85℃の三種類の中から選択です。
同じく、Smart7が80℃~96℃までの範囲で、1℃単位で変更できることを考えると、だいぶ劣ります。
浸し時間は、90秒、75秒、60秒、45秒、30秒から選択できます。
これも、Smart7が1秒単位で、かつ、何回注ぐのか、そのインターバルまで設定できることを考えると、だいぶ劣ります。
Smart7が考えるもバカバカしいレベルの、設定項目を持っていることを考えると、15通りしかない、グランエックスはだいぶ劣ります。
とはいえ、実際問題、この程度で十分なのでは?という気もします。
Smart7の設定項目はちょっと多すぎです(笑)
Smart7の場合、設定が多すぎて面倒だと思ったら、オートモードを使えばいいだけなんですけどね。
欠点の話
というわけで、ここからは、何か欠点はないのか、あるとしたら何なのか、について書いていきます。
量が入れられない。
最大でも270mlとのことなので、多人数分の抽出が必要なシチュエーションでは使えません。
家族が多いとか、来客が多いとか。
もしくは、僕のように、朝に、朝食時に飲む分と、会社で飲む分、合わせて大量に抽出する、という場合にも使えません。
一杯一杯、飲むたびに入れる。自分の分、もしくは多くても二人分しか淹れない、という状況でしか使えません。
それだったら、正直、ハンドドリップでいいのでは?とすら思います。
メッシュフィルターという諸刃の剣
実質これ「エアロプレスじゃんか!」という話はしました。
で、このグランエックスには、チタンメタルメッシュフィルターが採用されています。
メタルフィルターと蒸気プレスが相まって、コーヒーのオイル分もしっかり抽出され、コクのある味になりやすいです。かつ、エアロプレスに近い性質のある蒸気プレスなので、フレンチプレスほどではなく、ドリップのようなまろやかさも持ったコーヒーになります。
そういう意味で、かなりいいシステムではあるのですが、難点はメタルメッシュフィルターという、ペーパーいらずのシステムにあります。
底の粉ががんがんたまるの、ほんとに嫌なんですよねぇ……。
お値段が……
お値段2万円ちょっとです。
あと1万円ぐらい足すと、Smart7買えます。
Smart7でいいのでは……。
タイガーさんのコーヒーメーカーは、電気式サイフォンもそうなんですが、「すごい!」でも「これにこの値段出すなら、もっといいソリューションがあるのでは……」となって、「あえてこの値段でこれを買うなら、もっと別のもの(電気式サイフォンなら、サイフォンそのものとか)を買ったほうがいいのでは」となりがちな気がします。
こだわりがあるのはわかりますが……。
実際にすごいとは思いますけど……。
総合的にみると、「ちょっと……」な点が結構散見される印象です。
人を選ぶコーヒーメーカー
このグランエックスACQ-X020は相当に「人を選ぶ」コーヒーメーカーです。
このコーヒーメーカー、最大のウリである、蒸気プレスシステム「Tiger Press」を受け入れられるか否かが、大きな分水嶺になると思います。
ペーパードリップが好きで、カスタマイズ性が高いコーヒーメーカーが欲しいなら、ハリオスマート7で決まりです。これ以外の選択肢はない、と言ってもいいでしょう。
ペーパードリップにそんなに「こだわりはない」という人でも、スマート7を選んだほうが、総合的に幸せになれる可能性は高いでしょう。
というのも、だいたいの人は、エアロプレスよりペーパードリップのほうが好みに合うでしょうから。
カスタマイズ性がいらない(もしくはもっと狭くてもいい)のなら、もっと別のコーヒーメーカーを選ぶべきでしょう。それなら、スマート7もACQ-X020も選択肢の外です。
要するに、だいたいの人には、あまりおすすめできないコーヒーメーカーです。
どんな人ならいいのか
このACQ-X020は、大抵の人には刺さらないけど、刺さる人にはとても刺さる、という製品です。(よくよく考えたら、電気式サイフォンとかもそうですね。タイガーなりに考えたうえで、この方針を進めている気がしてきました。案外、いい商売になってるのかもですね。)
自分ひとりでしか飲まなく、かつ、忙しいので手早く淹れたく、かつ、エアロプレスがとても好きな人です。
「エアロプレス使ったコーヒーメーカーが欲しいなあ……エアロプレスの味大好きだから」と普段から考えているような人には、まさに「これしかない!!」というアイテムです。
エアロプレスが大好きで、かつ、色々とコーヒーを淹れ分けたい、という人には、まさにこれしかない、これを買ってください、というレベルのコーヒーメーカーと言えるでしょう。
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